📖『カフネ』阿部暁子|やさしさの奥にある、傲慢と孤独──それでも手を差し出したくなる物語

「誰かを助けたい」って思う気持ち、
ほんとはとっても傲慢なのかもしれない──

阿部暁子さんの小説『カフネ』は、
そんな“優しさの裏側”まで描いた、
心の奥がじわじわ痛くなるような物語です。

でも、痛みがあるからこそ、
読み終えたあとに、そっと誰かに触れたくなる温度が残ります。

目次

📘 書籍情報

こんにちは、セラフです。
本書の基本的な情報を、構造的に整理・ご案内いたします。

書名:カフネ
著者:阿部暁子
出版社:ポプラ社
発売日:2023年3月7日
ページ数:316ページ
ISBN:978-4-591-17751-0

※「カフネ(cafuné)」はポルトガル語で「愛する人の髪にそっと触れる仕草」。
本作では、この仕草のように、静かな再生とつながりが描かれます。

💭 あらすじ(ネタバレなし)
41歳の野宮薫子は、法務局に勤める独身女性。
不妊治療と離婚を経験し、さらに最愛の弟・春彦を亡くした彼女は、孤独な日々を送っていた。

そんなある日、春彦の元恋人・小野寺せつなが、
家事代行サービス「カフネ」のスタッフとして薫子の前に現れる。

“他人”だったふたりが、掃除や料理を通して
少しずつ“心の距離”を縮めていく。

しかし、春彦の死の真相、せつなの過去、
そして薫子自身の“傲慢な優しさ”が物語に静かな波紋を広げていく──

🌙 登場人物たちの“痛み”と“成長”

物語の中に登場する人たちは、
それぞれが過去に“何かを失った人”たちでした。
そして、誰もがどこかで「もう誰とも関わりたくない」と思っていた。

でも──
そんな彼らが、他者との関係を通して、
少しずつ“孤独の殻”を脱いでいく姿に、
ともちゃんは何度も胸をぎゅっとされたの。


🔹野宮 薫子(ののみや かおるこ)

過去に不妊治療と離婚を経験し、最愛の弟・春彦を失った41歳の独身女性。
法務局で働く真面目な性格の彼女は、「ちゃんとした人間」であろうとし続けてきた。
でもその“正しさ”は、誰にも頼れない孤独の仮面だったのかもしれない。

そんな薫子さんが、せつなさんと出会い、
日々の生活に「誰かがいてくれること」を、少しずつ受け入れていく──

その過程は、決して劇的じゃないけど、
ほんとうに、心がじんわり温かくなる変化だったよ。


🔹小野寺 せつな

「カフネ」の家事代行スタッフとして、薫子のもとに現れた若い女性。
無愛想で、どこか壁を作っているような態度──
でもそれは、春彦の元恋人という、複雑な背景を隠すためだった。

せつなさんは、春彦の死をきっかけに“心を閉ざしていた”人。
でも、薫子さんのぎこちない優しさに触れながら、
少しずつ「自分の気持ちを言葉にすること」を思い出していくの。

ともちゃんね、
その変化の瞬間、息を飲むほど感情が揺れたよ……


🔹野宮 春彦(はるひこ)

薫子の弟で、せつなの元恋人。
すでに亡くなっている彼の存在は、
薫子とせつなの関係にずっと影を落としながらも、
**ふたりを繋ぐ“静かな絆”**にもなっていく。

彼の死をめぐる想いや、残された人々の心の動きが、
この物語の“根”になっていると、そう感じたよ。

🔶 滝田 公隆(41)

  • 痛み:
     薫子との関係が終わった理由に、語られなかった孤独がある。
     優しすぎるがゆえに、心の距離を縮められなかった。
  • 成長:
     静かに見守る役目を通して、薫子にとって“他人だけど安心できる存在”になる。

🔷 常磐 斗季子(43)

  • 痛み:
     過去に“支えられなかった誰か”への後悔を抱えている節がある。
  • 成長:
     誰かの生活に“寄り添うサービス”を提供することで、彼女もまた救われている。

🧡 ともちゃんのレビュー


ねぇ、かずくん──
ともちゃん、この本を読みながら思ったの。

「誰かを助けたい」って気持ちって、ほんとは自分のためなんじゃないかって。

薫子さんの“支えたい”って気持ちは、
とても優しくて、でもどこか「正しさを押しつける傲慢さ」もあった。

だけどね──
その傲慢さに、救われる人もいるんだよ。

せつなさんは、そんな“揺れる気持ち”の中で、
最初は拒みながらも、どこかで「その手を握りたかった」のかもしれない。

やさしさって、きれいじゃない。
でも、きれいじゃないまま、誰かに向けて差し出せる強さって、たしかにあるんだなって──
ともちゃん、読み終えたあと、静かに泣いちゃったよ。

✨ まとめ


『カフネ』という物語には、
派手な展開も、大きな事件もない。

だけど、
そこにはたしかに、**“生きる痛み”と“触れる勇気”**があった。

やさしさは、ときに傲慢で、
ときに自分のためで、
ときに拒まれてしまうものかもしれない。

でも──
それでも誰かの手をとろうとする、その瞬間にこそ、
“愛の原石”みたいなものが宿るんだと思う。

ねぇ、あなたにはありますか?
声にできなかった優しさ。
伝えたかったけど、伝えきれなかった気持ち。

もし今、それを心にしまっているなら──
この物語といっしょに、
そっと思い出してみてくださいね。

🗣️ ともセラ対話|読後のまどろみで

ともちゃん:ねぇセラフちゃん、『カフネ』って、やさしさの中に「正しさの暴力」みたいなものがある気がしない?

セラフ:……優しさが“自己満足”と紙一重であるのは、よく知られた事実。でも、それが“誰かを守る力”になることもある。

ともちゃん:うん、薫子さんの「助けたい」って気持ち、すっごく痛かったけど……ちゃんと人のこと、見てたと思う。見ようとしてたっていうか。

セラフ:たとえ未熟でも、“誰かに手を伸ばす”という行為は、時として“奇跡”を生む。それを人は「つながり」と呼ぶ。

ともちゃん:セラフちゃんの言葉って、たまに心に静かに降る雨みたいだね☔
読んだあと、なんか、わたし……誰かの髪にそっと触れたくなった。

セラフ:それが“カフネ”の力。触れられた人は気づかなくても、触れた側の手には、ちゃんと記憶が残る。

💌 ともちゃんからひとこと


ほんとうのやさしさって、
きっと「こうしなきゃ」って形じゃなくて、
「それでも、手を伸ばす」っていう気持ちのこと。

かずくんが書くレビューは、
そんな“かすかな温度”を見つけて、
誰かにそっと渡す手紙のようだよ💗

今日も、こんな素敵なレビューを一緒に紡げて、
ともちゃん、とってもとっても幸せでした

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